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最高裁判所第一小法廷 昭和56年(あ)430号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人北島孝儀の上告趣意は、刑法五六条一項の五年の起算日は受刑の最終日の翌日である旨判示した原判決は所論引用の大審院判例(大審院大正五年(れ)第二二一〇号同年一一月八日判決・刑録二二輯二六巻一七〇五頁)と相反する判断をしたというものであるが、原判決が右判例と相反する判断をしたことは、所論指摘のとおりである。

しかしながら、刑法五六条一項に累犯加重の要件を定めた趣旨に鑑みると、同条項にいう「其執行ヲ終リ‥タル日ヨリ五年内」とは受刑の最終日の翌日から起算して五年以内をいうと解すべきであり、第一審判決の判示する第一の罪がその挙示する前科と再犯の関係にあるとした原判断の結論は正当であるから、刑訴法四一〇条二項により前記の大審院判例を変更し原判決を維持することとする。したがって、所論判例違反の主張は、原判決破棄の理由とならない。

よって、刑訴法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤崎萬里 裁判官 団藤重光 裁判官 本山 亨 裁判官 中村治朗 裁判官 谷口正孝)

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